推進波と修正波

交互に現れる

相場の基本的な動きは、上下に波のように繰り返し動くことで成り立っています。エリオット波動理論では、この波を「推進波」と「修正波」として説明し、それらが交互に現れることで相場のトレンドが形成されるとしています。推進波はトレンドの方向に動く強い勢いの波で、修正波はその反動として一時的に逆方向に進む波です。

推進波は通常、トレンド方向に進む5つの波で構成されます。例えば、上昇トレンドの推進波では、価格が段階的に上昇し、5つの波は「第1波」から「第5波」までそれぞれ異なる特徴を持っています。特に、第3波はトレンドが最も強まる場面で、多くの場合、第1波や第5波よりも大きく伸びやすいのが特徴です。

修正波は推進波に続いて現れるトレンドの反発の波で、通常3つの波(A-B-C)で構成されます。修正波が出現することで、相場は次の推進波に向けての調整を行うため、推進波と修正波の繰り返しによって相場のサイクルが作られていきます。

フラクタル構造

相場には「フラクタル構造」が存在しています。フラクタル構造とは、自己相似性を持つ幾何学的なパターンのことです。これは自然界の中にもよく見られるもので、例えば、雪の結晶や海岸線、木の枝分かれなどがその例です。これらは、全体を拡大しても縮小しても同じようなパターンが繰り返されているという特徴を持っています。相場の動きも同じように、どの時間足で見ても上下の波形が繰り返されていることを意味します。たとえば、日足で見ても1時間足で見ても、同じような推進波と修正波が現れることが確認できます。これにより、相場の動きが多層的であることが理解でき、各時間足での相場の動きを把握する助けになります。

エリオット波動においても、推進波の5波や修正波の3波は、より短い時間足で見るとそれぞれがさらに細かい5波や3波に分割されます。このように、波の中にまた別の波が含まれている構造を繰り返し見ることができます。

上の図は、5つの上昇推進波と3つの下落修正波から成るエリオット波動の基本形を示しています。黄色の点線で囲まれた部分を拡大すると、さらに小さな波が確認できます。これは、どの時間足においても波形がフラクタルに現れていることを示しています。フラクタルとは、全体のパターンが部分の中にも繰り返し現れる自己相似性を持つ構造のことです。つまり、大きな波の中に小さな波が同じように含まれているため、どの時間軸で見ても同じような波形が繰り返し見られるという特徴を持っています。この性質を理解することは、波動理論をより深く理解するために非常に重要です。

波形の種類

推進波とは

推進波はトレンドの方向に向かって進む5つの波で構成され、強いトレンドが続く局面で出現します。推進波を見極めることで、相場のトレンド方向を予測し、適切なエントリーポイントを見つけることができます。この推進波には、「インパルス(衝撃波)」と「ダイアゴナル」の2つの種類があります。

インパルス

「インパルス」は推進波の代表的な形で、明確な5つの波から成るパターンです。特にトレンドが強く形成されている局面で現れるため、トレーダーにとって重要なシグナルとされます。第1波、第3波、第5波で価格が大きく動くことが特徴で、トレンドフォローに適した局面として重視されます。

内部構成波は、5-3-5-3-5の波形を取ります。

インパルスは価格の動きが非常に明確であり、トレンドの勢いが強い局面で現れます。そのため、トレーダーにとってはエントリータイミングを見極める際に重要な指標となります。また、インパルスはトレンドが持続していることを示すため、押し目買いや戻り売りを検討する際に活用しやすいです。

ダイアゴナル

「ダイアゴナル」は、インパルスとは異なり、推進波が斜めに進みながら交互に上下するジグザグパターンで進行します。価格が上下しながらトレンドの方向に進むため、インパルスのように一直線ではなく、より複雑な動きを見せるのが特徴です。通常、トレンドの終盤やトレンド転換が予想される局面で出現し、リスクを抑えたエグジットのタイミングを見極めるのに役立ちます。

内部構成波は、3-3-3-3-3の波形を取ります。また、トレンドの始まりで見られるダイアゴナルでは、5-3-5-3-5の波形を形成することもあります。

ダイアゴナルはトレンドの終わりや転換点で現れることが多いため、トレーダーにとっては警戒すべきシグナルとされます。特に、トレンドの勢いが弱まっていることを示す場合が多く、利益確定やポジションの調整を行うタイミングとして適しています。このように、インパルスがトレンドの強さを示すのに対して、ダイアゴナルはトレンドの終息や反転の兆しを示す違いがあります。

修正波とは

修正波は、トレンドとは逆方向に進む波で、通常は3つの波(A-B-C)から構成されています。これは、トレンドの勢いが一時的に弱まる局面で現れます。修正波は、相場が一時的に反転し、利益確定を行うチャンスや新たなエントリー準備を行う機会を提供するものです。

ジグザグ

「ジグザグ」は、A-B-Cの3つの波で構成される修正波で、価格が急激に反発するパターンです。トレンドの調整局面で見られるため、短期的な反発のシグナルとして重要です。

内部構成波は、5-3-5の波形を持ちます。この「5-3-5」の表記は、A波とC波が5波構成の推進波となることを意味しています。B波は3波構成の修正波となることを意味しています。ただし、トライアングルの場合は5波構成となります。

フラット

「フラット」は、ジグザグよりも横ばいに近い動きをする修正波で、トレンドの勢いが一時的に落ち着いていることを示します。このパターンが見られると、次の推進波に向けての準備段階であると考えられます。

内部構成波は、3-3-5の波形を持ちます。この「3-3-5」の表記は、A波とB波が3波構成の修正波となることを意味しています。(トライアングルの場合は5波)そして、C波が5波構成の推進波となることを意味しています。

トライアングル

「トライアングル」は、価格が収束する形で形成される5つの副次波から成る修正波です。この波形は主に横ばいの局面で出現し、トレンドの終わりが近づいているサインとして解釈されることが多いです。

内部構成波は、3-3-3-3-3の波形を持ちます。この「3-3-3-3-3」の表記は、各副次波が3つの修正波で構成されていることを意味しています。副次波がトライアングルになる場合もあります。

複合波

「複合波」は、ジグザグ、フラット、トライアングルなど複数の修正波が組み合わさった非常に複雑な波形です。この波は、価格の調整が長期間にわたる局面で現れることが多く、通常の修正波と比べて分析が難しいため、特に慎重な判断が必要です。また、複合波は「W-X-Y」などの形で表記されることがあり、それぞれが異なる修正波のパターンを示します。例えば、「W」は最初の修正波、「X」は中間のリンク波、「Y」は次の修正波を表し、これらが組み合わさって一つの大きな修正パターンを形成します。

まとめ

エリオット波動理論は、相場の動きを理解し、トレンドに沿ったエントリーポイントを見極めるための強力なツールです。相場は推進波と修正波が交互に現れることで形成され、これにより市場のサイクルが生まれます。また、相場の動きはフラクタル構造を持つため、どの時間足でも同様の波形が繰り返し見られます。

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