1.市場心理とエリオット波動
ウォーレン・バフェットは、「恐怖が広がるときに貪欲であれ、貪欲が広がるときに恐怖であれ」という投資哲学で知られています。市場が楽観的なムードに包まれるときには売りに転じ、逆に悲観的な雰囲気が漂うときに買いのチャンスを見出すこの考え方は、エリオット波動の「集団心理」に関する理論と共通しています。
エリオット波動は、トレーダーたちの心理が相場の動きに反映されるパターンを分析する理論であり、これを活用することで相場の転換点を見極めやすくなります。バフェットと同じように、エリオット波動を使えば、相場がどのように動いていくか、そしてどのタイミングでエントリーやエグジットをすべきかを考える際の指針にできます。今回は、このエリオット波動の基本を初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
エリオット波動は、アメリカの会計士であるラルフ・ネルソン・エリオットが1930年代に発見した相場理論です。エリオットは、「相場は一定のリズムで動いており、その動きが繰り返し現れる波形を作り出す」という仮説を立てました。この波形が「エリオット波動」として知られ、現在では多くのトレーダーがこの理論をトレードの参考にしています。
エリオット波動の面白いところは、市場参加者の「心理」が反映されている点です。トレンドが続く時、価格が上昇しやすくなる波と、一時的に反転する波が交互に現れることで、相場にリズムが生まれます。このリズムを理解することで、エントリーやエグジットのタイミングを見極めることができるため、トレードにおいて非常に重要です。
2. エリオット波動の基本構造
エリオット波動は「5つのインパルス波」と「3つの修正波」という2つの段階で成り立っています。この5-3のリズムが一巡することで、相場のひとつのサイクルが完了します。次に、それぞれの波について簡単に見ていきましょう。
- 推進波: 相場がトレンド方向に向かって進む5つの波です。1波、3波、5波が上昇波となり、2波と4波が調整のための一時的な下げとなります。
- 修正波: インパルス波が終わった後に、逆方向に進む3つの波で構成されます。A波、B波、C波と呼ばれ、相場の勢いが弱まることを示します。
このように、5波動の推進と3波動の修正が交互に繰り返されることで、エリオット波動が形成されます。
3. エリオット波動が示す「市場心理」
エリオット波動は、トレンド方向に進む5つのインパルス波(12345波)と、反対方向に進む3つの修正波(ABC波)で構成されます。それぞれの波に市場参加者の心理が反映され、その心理が価格となってチャート上に表示されていると考えても過言ではありません。
第1波 :新しいトレンドの始まり(懐疑と観察) トレンドが発生し始めますが、ほとんどのトレーダーはまだ気づいていません。少数の「早期参入者」が新しい方向へのポジションを取り始め、価格が穏やかに上昇します。
第2波:慎重な調整(疑念とリスク管理) 第1波で価格が上がった後、一部の投資家が利益確定に動くため、一時的に価格が下がります。しかし、第2波の下げは、第1波の始点を下回ることはほとんどなく、トレンドが維持されていることが示唆されます。多くのトレーダーがまだ様子を見ている段階です。
第3波:トレンドの加速(楽観と群集心理) 市場参加者がトレンドに気づき、積極的に参入するため、価格が勢いよく上昇します。第3波は通常、最も長く強い波で、トレンドの主軸となるポイントです。この波は市場で最も注目され、トレーダー心理が「今がチャンス」として高揚する局面です。
第4波: 一時的な調整(警戒と利確) 第3波で買いが集中し過ぎたため、価格がやや下落します。トレーダーの中には、この局面で利益確定に動く人も増えますが、第2波と同様に下げ幅は限定的です。このため、トレンドがまだ続くと感じるトレーダーも多いです。
第5波: 最終局面(過熱と警戒感) トレンドの最後の上昇(または下降)です。トレーダーの間で「相場が天井に近づいているかもしれない」という懸念が生まれ、勢いは第3波ほど強くありません。この時点で、早期参入者は利益確定を検討し始め、新たな調整局面に備える姿勢が見られます。
A波: トレンドに対する懐疑(利益確定と警戒) 第5波の頂点でトレンドが弱まると、一部のトレーダーが利益確定を始めます。この売り(または買い戻し)により、価格がトレンドとは逆方向に動き出し、相場に最初の調整波であるA波が形成されます。
B波: 一時的な希望(反発と楽観) A波の調整が一段落すると、多くのトレーダーが「この下落は一時的なもので、トレンドがまだ続く」と考え、再び元のトレンド方向へエントリーします。このため、B波では一時的に反発が起こりますが、これは一時的なものであり、実際にはトレンドが弱まっている兆候です。
C波: 最終的な諦め(投げ売りと完全な修正) B波での反発が終わり、価格が再びトレンドと逆方向に進むと、トレーダーの間で「本当にトレンドが終わった」という認識が広がります。このため、C波では多くのトレーダーがポジションを解消し、売り(または買い)が加速します。C波は通常、A波と同じ値幅で終わることが多いですが、市場の転換点ではさらに大きな値幅を形成することもあります。
これらの波動が持つ心理を理解することで、エントリーやエグジットのタイミングを予測しやすくなります。
4. エリオット波動を使うメリット
トレンドの流れがつかみやすくなる
- どういうことか?エリオット波動を学ぶと、相場が現在どの位置にあるのかを判断する助けになります。例えば、「上昇トレンドがまだ続いているのか、それとも反転し始めたのか」といった、相場の大まかな流れがわかるようになります。相場がどの段階にいるかを把握することで、これからの動きを予測しやすくなります。
- なぜ重要か?FXは、相場の「トレンド」を読んで売買することが重要なポイントです。トレンドの流れを把握できることで、無理に逆行した取引(上昇トレンドなのに売りを仕掛ける、など)を避けやすくなり、無駄な損失を減らせます。また、トレンドが続くならその方向についていくことで利益を伸ばしやすくなります。
- 実際のトレードにどう活かせる?エリオット波動の知識を活用すると、「この上昇がどれくらい続くのか」「この反転がどこまで続くのか」を見極める判断材料が増えます。特に、5つのインパルス波と3つの修正波の構成を理解していると、トレンドの進行具合を捉えやすくなります。
エントリーとエグジットのタイミングがわかりやすくなる
- どういうことか?エリオット波動では、価格の動きが「波」によって構成されていると考えます。この波動を見極めることで、トレードに最適なエントリーポイントやエグジットポイント(売買のタイミング)がわかるようになります。特に、第1波や第3波の始まりがトレードのチャンスとなりやすいです。
- なぜ重要か?トレードで利益を上げるためには、「いつ買うか」「いつ売るか」がとても重要です。エリオット波動の考え方を使うことで、相場が上昇や下落を始めた「初期の段階」で入る(エントリー)チャンスを見つけやすくなり、より効率的に利益を狙えます。また、相場が反転しそうな場面でエグジットできれば、利益を確保しつつリスクを抑えることができます。
- 実際のトレードにどう活かせる?例えば、第1波の終わりで第2波の調整が起きてからの上昇が第3波として始まるとき、この第3波の始まりがエントリーポイントになります。このタイミングで買いエントリーを行うことで、トレンドの強い部分を捉えやすくなります。また、第5波の終わりに近づいたときは、エグジットを検討することで、反転するリスクを避けられます。
リスク管理がしやすくなる
- どういうことか?エリオット波動を使うと、相場がどの波にあるかがわかるため、トレードにおける損切り(損失を抑えるためのポイント)や利確(利益を確定するためのポイント)を設定しやすくなります。具体的には、「第3波が終わるまでは保持しよう」や「第5波が終わる前に利益確定しよう」など、トレード計画を立てやすくなります。
- なぜ重要か?FXにはリスクが伴うため、リスク管理が非常に重要です。波動の進行状況が把握できると、無計画に取引をすることなく、損失を最小限に抑えることが可能になります。例えば、エリオット波動を活用することで、「この位置まで価格が動いたら損切りをする」など、明確な基準を設けられるため、感情に流されずに冷静な判断ができます。
- 実際のトレードにどう活かせる?例えば、第2波の調整局面では、トレンドが反転する可能性は低いため、損切りラインを第1波の始点あたりに設定することで、大きな損失を避けつつトレードが続けられます。また、第5波が終わりに近づいたら利益確定を行うことで、逆行するリスクを抑えつつ利益を守ることができます。
5. まとめと次のステップ
エリオット波動の基本的な理論とその魅力について解説しました。エリオット波動は、相場のリズムを理解することでトレードに役立つ予測を立てやすくし、トレードの精度を高めるために有効な手法です。しかし、基礎を理解するだけでなく、次のステップとして「それぞれの波の特徴」や「波のカウント方法」を学んでいくことが、さらに深い理解を得る鍵となります。
次回は、エリオット波動の各波の特徴や、カウントの仕方について解説していきます。このステップを踏むことで、エリオット波動を活用したトレードがより効果的になるでしょう。