初めに
ビギナーの時期に、是非手元に置いて何度も読み返していただくと、本当に助けになる本を紹介します。
投資本では、有名なパンローリング社から出版されている「高勝率トレード学のススメ」です。著者は、マーセル・リンクという1980年代にアメリカの証券会社に勤めていた方が書かれた本です。随分と古い本ですし、翻訳本というとこで、ところどころで今の相場環境にそぐわないところもありますが、それを補ってあまりある価値がこの本にはあると感じています。
この本に、秘密の手法が書いてあるかと言えば、具体的なトレード手法を説明している本ではありません。中盤にブレイクアウトシステムやオシレーターを使ったトレード手法が書かれてはいますが、正直あまり参考になることはありません。(個人的な見解です。)
書いてあるのは、「トレードをするというのはどういうことなのか?、どういう心構えを持つべきなのか?、どのような準備をして臨めばいいのか?」という事が書かれています。
第1部 トレーディングの心得
第1章トレーディングの授業料
第1章では、トレーディングの授業料として、トレーディングをこれから始めようとしている人や、始めたばかりの人が、まず何をすればいいのか?とか、どんな心構えで臨めばいいのかについて書かれています。
スマホゲームでいうところのいわゆる「チュートリアル」です。最初から儲かるものではないということや、どんなことを学ばなければいけないのか。学習期間や学習段階についても書かれています。日記に何を書くべきかというのは、本当に地味な作業ですが、必要な学習段階だと思います。
第2章 現実的な目標を設定しよう
私も最初は、「1年で1億円を稼ぐぞ」という目標を立てていました。そして、ビギナーズラックで、100万円を3か月足らずで、600万円にすることができました。9割の人が1年以内に退場する厳しい世界だとは聞いていましたが、自分は成功する1割の人間だと信じて疑いませんでした。しかし、その後の1か月で、その600万円は、ほぼゼロになりました。
みなさんの中でエクセルで毎日資金を1%づつ増やすだけで、あっという間に福利で資産が急上昇する計算をして、夢を見たことはありませんか?トレード始めるんだから、一日に1%増やす位は、簡単だろうと思ったことはありませんか。1年に200日トレードすると、72万円に増えます。2年後には、約500万円に、そして3年後には、約4,000万円に増えることになります。しかしながら、そんな幻想は夢だということが著者の体験とともに書かれています。
第3章 ハンディをなくせ
メジャーリーガーは、小さいころから野球漬けの人生を送り、甲子園で活躍し、プロリーグにドラフト指名され、FAを取得し、ようやく世界最高峰のステージで活躍をすることができます。そこには、同じような才能を持ち膨大な努力をした選手達が集まります。素人の私がちょっと参加したいといっても、参加させてもらえるはずもありません。
しかし、相場の世界は、証券会社と契約をして口座を持つことができればすぐに始めることができます。一気に初めて1週間でメジャーリーガーと勝負することができるのです。いや、逆に始めたばかりなのに、いきなりメジャーリーガーに勝負を挑んでいるということですね。
彼らは、厳しい指導者の元で幼いころから、適正な指導と練習を積み重ね、自分のスタイルに合った専用のバットやスパイクを準備し、球団という組織の情報や最先端のトレーニングを積んで、バッターボックスに立ちます。
そこに、近所の野球好きなおじさんが、スニーカーと家にあった古いバットで同じように立つわけです。もう誰が見ても勝敗は明らかです。また、自分達もそんな勝負するわけないですよね。
ところが、相場の世界では不思議なことに、ほとんどの人が「俺なら打てる」と思っているんですよね。口座を持った時点で、世界中の機関投資家と膨大なハンディキャップを背負って勝負することになるのが現実です。
そういう厳しさについて、書かれています。後半には、そのハンディの埋め方が書かれていますが、ちょっと時代が違うので、この部分は軽く読み飛ばしてもいいかと思います。
第2部 ニュースの利用
第4章 ニュースでトレードする
ここでは、ファンダメンタル的な視点で、ニュースについて書かれています。ニュースを利用してトレードをするというよりは、ひとつのニュースを信じて、自分のバイアスでトレードをするのではなく、目の前の値動きを大切にするように書かれています。ただ、この本が書かれた時代とは異なり、インターネットが普及し、一般トレーダーでもかなり早くいろいろなニュースを入手することが可能となりました。
個人的には、ニュースの大半は値動きの答え合わせ的なものだと感じていますが、その中でたまに今後の値動きにつながると思うようなニュースもあります。
経済指標のように事前に発表する日時が決まっているものは、自分のトレードに影響が出るのか?出ないのか?を把握しておく必要はありますね。
第3部 テクニカル分析
第5章 複数の時間枠でチャンスを広げよ
これは、今では当たり前のように言われているマルチタイムフレームについての解説ですね。大きな時間軸で全体の流れをつかみ、トレードは自分のスタイルにあった時間軸を使うことについて書かれています。
第6章 トレンドでトレードする
序盤では、トレンドとは何か?に始まり、トレンドラインやチャンネルラインについて簡単に説明がある。
その後で、トレンドフォロー系のインディケーターについて、見方や使い方について解説がある。
解説があるのは、「移動平均線」、「ADX(アベレージ。ディレクショナル・インデックス)」の二つとなっている。
最後に、トレンドのサイクルについて説明があり、「トレンドの発見」→「押し目買い・戻り売り」→「トレンドの終焉」となっている。トレンドの終焉についての説明は、エリオット波動5波の相場の心理状態について説明があり、なるほどと思えるシチュエーションとなっている。
第7章 オシレーターを使う
ここでは、オシレーターの基本的な仕組みと、オシレーター系のインディケーターの説明がある。
解説があるのは、「ストキャスティックス」、「RSI(相対力指数)」、「MACD(移動平均収束拡散法)」、「オシレーターのダイバージェンス」となっている。